カルガモ隊日野宿本陣から出陣
6月12日、時は平成の世、いつもは静かにお客さまをお迎えしている日野宿本陣。
この日は朝から、右往左往する人で何やらせわしい気配。
思いもしなかったお客さまの来陣があったのです。
見事な行進をみせるカルガモ隊
建物と色合いがマッチしています
本陣のお客様も得した気分
本陣の入口、門の裏手にある竹の下でカルガモが卵を抱いているのが見つかったのは先週のことでした。
その卵が、この日の朝、無事孵化して、チッィ、チッィ、とちょこちょこと、生まれたばかりのカルガモの赤ちゃん6羽が母親を追って本陣の敷地を歩き回っていたのです。
何せ生まれた場所から数mも行くと、車が行き交う甲州街道、間違ってもそちらに行ってもらっては困るし、どうやら母親は水がある所を探しているように見えるのですが、かって本陣の庭にあった大池ももはや姿もなく、かくて、人間たちは植木鉢の鉢皿に水を入れ、カルガモ隊の後を追い、使ってくれぬと嘆き、少しは安全な内庭に入ってもらったりと、お世話係に。
母親は本陣から南へ30mほどのところを流れている日野用水からの水の匂いを感じていているらしく、しきりにその方面への出路を探して隊を移動させるのですが、塀に阻まれていまします。
このままでは、人気がなくなるとやって来る猫や、空中でもう狙いをつけているであろうカラスの格好の餌食になることは間違いありません。
囲む人間は、市役所からも応援が駆けつけ思案を巡らせ、こんな時こそ、お助けをと市内にある野鳥の会の施設「鳥と緑の日野センター」へ連絡するも、土曜日はお休み。
同じく多摩動物園へ望みをつないだものの、「それは自然に任せるしかありません。襲われるのも自然ですから。市役所の関係部署へ連絡を」。
「関係部署から連絡したのに、自分へ連絡しろってこと?」、とこちらも空振り。
日野ケーブルテレビも取材にやってきました。
本陣と隣にある製材所を分ける鉄の門が開いたのは、そんな時です。
製材所の敷地を抜け、川崎街道の歩道を歩いて行けば、まずは安全な用水路にたどり着けるのでは、という算段です。
その距離は100mほど、もう母親に任せるだけです。
出陣前の休息になりました
人間の騒動をよそにカルガモ隊は、作ってもらった水たまりで一休み。
よほどお腹も空いていたのか、もらった残飯もつまんで、水を飲んで、その仕草を見て、余計につのるのは「無事に用水まで行ってもらいたい」との思いです。
本陣滞在6時間あまり、3時半ごろ、すごいもので、休みながらも母親は考えていたらしく、すんなりと製材所の敷地へと隊列を向け出陣。
無事に用水までたどり着いたカルガモ隊。
カルガモは同じところに営巣するといいます。
来年も来陣されるのでしょうか。