お不動さまと「若宮神社」のお神輿
夏の終わりを告げるかけ声が毎年、この時期、お不動さまの境内にやって来ます。高幡の鎮守「若宮神社」のお神輿です。
正月の初詣から始まり、節分、桜、春祭り、あじさい、七夕、と駆け抜けてきた高幡のお不動さまも、夏になるとやっと一息といったところでしょか。
もちろん毎月28日の縁日や「ござれ市」の日には賑わいはするものの、白い光に照らされた境内はなんとなくのんびりとしています。
これからは、10月の下旬ともなると恒例、「菊まつり」。顔ほどもある立派な大きな菊の前で記念写真を撮る七五三に見とれた眼を、ふと見上げてみれば、山内の楓が五重塔と艶やかさを競おうと準備を始め、色付きは万灯会の頃に一段と光りを放ち、落ちいく色葉とともに一気に駈け下り大晦日、そして正月に突入です。
秋の始まりを予感させるかけ声は、京王線の向こうにある神社から、狭い地下道をすり抜け、徐々に参道から忍び寄り、境内に入ると仁王門と不動堂にこだまし、不思議な空間を造りだします。
そもそも「若宮神社」の起源には高幡不動尊、不動堂の本尊不動明王の傍らに立つ二童子を彫った僧侶が忽然と消えた場所を祀った、との伝説があります。若宮神社になる前は、その名も僧侶が消えたことから別旅(わかたび)明神といい、神社がある場所の地名も別旅。
そのころからの関係ですから、今風の神仏分離に慣れた眼から見れば、不思議に思える風景もことさら言うほどのことではないのです。そう言えば、浅草の三社祭りだって、浅草寺境内に乗込んでいるし。
ひとしきり、境内を練ったお神輿は五重塔と並んで一休みです。普通お神酒所は字のごとくお酒が振る舞われるのが常ですが、さすがお寺の境内ともなるとそうとはいかないらしく、「高幡まんじゅう」が振る舞われました。それを威勢よい担ぎ手たちがニコニコ頬張る光景は、ちょっと可愛くもあり怖いような。
仁王門から遠ざかるかけ声は別れ際に「夏は終わったよ!ほら、忙しくなるぞ!」とお不動さまに告げているようでした。