一番好きな風景は
今年の5月9日と10日は「ひの新選組まつり」、日野の街はだんだら模様の浅葱色の新選組隊士に占領されていました。
思えば、大河ドラマ『新選組!!』が放映されたのが5年前のこと。
その時とこの時の記憶が重なっているのですから、もう5年も経ってしまったことになります。
どうもそれはマクドナルドが店内で流すために制作した番組。
その日、平日のがらんとした硬い椅子で無理矢理くつろいだふりをして、プラスチックカップに入ったコヒーをすすっている時。
やけにはしゃいだ声が響いている方を見ると、モニターの中には、場を盛りたてようとする使命に燃えているのか若い女性インタビュアー。
インタビューの相手が、自転車に夢中、ということで話は、「それでは、どこが一番好きな風景なんですかぁー」と、北海道とかの壮大な景色を期待しているらしく、やけに語尾上がり調子。
少ししゃがれた静かな声が答えて、「学校の窓から見えた川と丘」。
肩すかしを見透かされまいと、またまたトーンを上げて、「どこのですかぁー?」。
ぼそっと、「高校の」。
意図されたのか、されていないのか、その掛け合いが可笑しくて。
9日に行われた忌野清志郎さんの告別式には4万も追悼の人が押し寄せ、日野からも近い、国立市と国分寺市堺にある「多摩蘭坂」は哀悼の花に飾られたのだと、聞きました。
同じ日、その日も変わらない「学校の窓から見えた川と丘」に沿った高校のグランドからは野球部が試合をしているのでしょうか。
アナウンスの声とバットからの金属音が、久しぶりの晴れ空に吸い込まれていました。
トランジスタ・ラジオを聞きながら昼寝をした、屋上。
ぼくの好きな先生がいた、部屋。
RCサクセションの原点、日野高校。
その日には花を捧げる人もなく、なに変わりもしていませんでした。
川と丘もいい風に、のんびりと横たわっていました。