百草の樹林で
これからの冬に向う一ヶ月、丘陵の木々も街の街路樹も、染め色を濃くし、そして、春までしばしの休みに入ります。
その先のきらめきと明ける気持ちで新緑を待ちこがれたのとは反対に、秋の色づきは有終でありながら、艶やかさに心躍らされるのは、何故でしょうか。
京王百草園から百草八幡宮に行くことができます
ドングリ拾いも拾いきれません
樹勢もまだまだ
日野の紅葉のスポットのひとつ京王百草園。
7日から、「紅葉まつり」も始まったので、具合を覗きに行ったところ、まだちょっと早い様子。
これから、ぐっと気温が下がると、来週の中旬あたりから、本格的な見ごろに突入といったところでしょう。
京王百草園での紅葉の楽しみは、園の周りを囲む濃い緑と、遮るものがない空の青さと、の対比。
濃い緑は園内、そして、お隣百草八幡宮の境内に群生するスダジイです。
京王百草園もある丘陵は関東平野の南側を縁どるように、高尾山の方から三浦半島まで続いている多摩丘陵。
多摩ニュータウンを代表するように、この丘陵地は、昭和40年代から宅地が開発され、今なおその勢いは消えていません。
とはいっても、今、丘陵の緑の中心である雑木林も、昔、人の生活のため、木材として、換金物の炭の原料として、落ち葉は堆肥として、開発された人工林、いわゆる「里山」、であったのですから、「手つかずの自然」ではありません。
多摩丘陵は大消費地江戸に近かったこともあり、見事な「里山」地域でした。
ほとんど利用できる、丘陵は雑木林に変えられ、例えば、百草園からの古い写真を見ると、木々が鬱蒼と茂った今よりも格段に視界が効いて、周りの丘陵地の林も広々した感じです。
ということは、木々が大きくなる前に資源として有効に使われていたのでしょう。
宅地に、里山に、開発される前の多摩丘陵はスダジイやウラジロガシなどの照葉樹林が覆っており、これが南関東の丘陵地本来の自然の姿ということです。
百草八幡神社本殿の裏にある巨木
土地が利用しにくかった、社寺地だったなどの理由で、人の手が入らず、長い時間を経て照葉樹が残っている場所は今なお、丘陵の本来の姿が見られる場所なのです。
百草のスダジイの群生地もたぶんこういった理由から、残っているものでしょう。
多摩丘陵でこれだけの規模があるのはここだけ、都内でも希有、日野市の天然記念物に指定されてもいます。
紅葉の借景としてではなく、近くに寄って、樹間から見え隠れする紅葉もお楽しみを。