浅川、夏の風物さようなら
7月中旬になると、開園する日野市民プール。
浅川の土手沿いにあるこのプールは、50mプールと子供用のプールがあり、はやりのスラーダーなんかはありません。
何せ昭和40年代に作られたのですから仕方がありませんが、広い空の下に似合うシンプルプールです。
ですが、このプール、いや、夏のプール開催期だけのお楽しみがありました。
これは他のどこでも見られない、日野の夏の風物となってもいました。
それは、「渡し舟」。
この階段を降りると船着き場がありました
料金無料、小さな子どもにも人気でした
渡しだけの利用もOK。散策の目玉でした。
舟待ちのベンチも寂しそうです
市民プールはちょうど、高幡橋と一番橋との中間にあり、対岸に住み人たちにとっては眼の前なのに、ぐるーっと遠回りしなければ利用できません。
その悩みを解消するために、毎夏プールの間だけ、川をのんびりと渡る「駒形の渡し」が運行されていました。
渡しが始まった当初は、まだ生活排水が流れ込んでいた浅川は、何となく、ドブ臭く風流を楽しむには及びませんでしたが、それが一転下水が普及した近年は、泳いでも大丈夫くらいの清流が戻っています。
反面困ったことも起っています。
本来は川に流れ込むはずの雨水が下水に流れ込み、そもそも名前通り「浅い川」の水量がさらに減ってしまっていること。
流域が住宅化されたことにより、土砂の流入が少なくなって、河床が低くなっているのに、大雨の時には逆に一気に増水、さらに河床を削ってしまうこと。
洪水への備えと、河床の補強を兼ねての毎年のように河川改修が行われて流路が定まらないこと。
「駒形の渡し」は渡し場所を「掘り下げ」、船着き場を毎年作って運行されてきましたが、川の変化の影響を受けて、だんだんと経費がかさむようになっていました。
日野市は現在、大企業をはじめ中堅企業の移転の歯止めがききません。
都市部にあるが故の固定資産税の負担と、周辺の住宅化によって操業が難しくなっているのです。
市は財政難を訴え、予算の見直しを行った結果、背に腹は代えられない、この夏の風物詩もあえなく今年から運行が中止となりました。
便利のための渡し舟は、川を身近に感じられる穏やかな気持も運んでいました。
また、いつの日にかの復活が待たれます。